明細書が語る日本の医療

子宮がん新規患者 上皮内がんを含む数字が発表されている

保険会社が喜ぶ?(C)日刊ゲンダイ

 ところが他臓器と同様、子宮の上皮内がんは「本当にがんなのか」どうかで、世界的に見解が揺れています。これが「本物のがん(浸潤がん)に移行する確率は、きわめて低い」という研究結果が次々に発表されているからです。上皮内がんを除けば、患者数は約1万6000人(01年)から約2万5000人(12年)に増えたことになります。年齢調整罹患率で見ると、約1.5倍の増加です。

 さらに「死亡」の数字に目を移すと、年齢調整死亡率は子宮がん全体で見ても、子宮頚がんだけで見ても、今世紀に入ってからほとんど変わっていないのです。それどころか実は1990年以降、多少の増減はあるものの、実質的にはずっと一定のままです。

 この間に子宮がん検診の受診者は急増しています。正確な統計がある2007年には「過去1年間に検診を受けたことがある40歳以上の女性」の割合は21・3%でした。これが13年には27・5%に上昇しています。その結果、新規患者数が増加したと考えられるわけです。ところが早期発見できても危険性の低い上皮内がんばかりなので、年齢調整死亡率の低下にほとんど寄与していないのです。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。