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子宮がんの手術件数 頸がんは2回、3回手術を重ねることも

子宮がんの手術件数
子宮がんの手術件数(C)日刊ゲンダイ

 子宮がんは「子宮頚がん」と「子宮体がん」に分かれているため、それぞれ手術も異なっています。主な手術の件数を〈表〉にまとめました。

 子宮頚がんの手術は「子宮頚部切除術」と「子宮頚部上皮内がんレーザー照射治療(蒸散術)」の2種類です。子宮頚部とは子宮本体と膣をつなぐ、直径2~2・5センチ、長さ3~4センチの円筒形の部分です。その中に細い子宮頚管が通っていて、出産に際しては胎児がここを押し開いて出てくるわけです。

 子宮頚がんは子宮頚部の底のほう(膣側)にできやすいため、手術では内視鏡を挿入してレーザーメスなどを使い、底部から子宮に向かって子宮頚管を取り巻くように円錐形に筋肉をえぐり取ります(円錐切除)。これが子宮頚部切除術です。出血が少なく、手技も簡単なため、手術時間は20分前後。普通は日帰り手術で、入院してもせいぜい1泊です。また、レーザー照射治療は上皮内がんに強力なレーザーを当て、細胞を瞬時に破壊してしまう方法です。

 子宮頚がんの手術件数の合計は約4万人。患者は毎年1500人近く増え続けているので、2014年度には3万4000人前後に達したと思われますが、すべての患者が手術を受けたとしても計算が合いません。実は円錐切除を行っても、がんが再発するケースが少なからずあるため、2回目や3回目を受ける患者がいるのです。

 レーザー照射は上皮内がん限定ですが、件数は患者4人に1人の割合です。残り3人は円錐切除を受けることになります。子宮頚がんが子宮内にまで浸潤している場合は、子宮ごと切除します(単純子宮全摘出術)。こちらの件数は、子宮筋腫の手術とまとめて集計されてしまっているため、正確な数字が分かりません。ただ、有名病院などのホームページを見る限り、数は限られているようです。

 子宮体がんには開腹ないし腹腔鏡による子宮全摘術(子宮悪性腫瘍手術)が行われます。しかし腹腔鏡は件数が少なく、全体の1割に達しません。大半が開腹術です。卵巣と卵管など、子宮付属器官も一緒に切除するのが一般的です。手術件数と2012年の新規患者数の比較から、やはりほとんどの患者が手術を受けている計算になります。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。