あの話題の治療法 どうなった?

「にんにく注射」 本当に疲労回復に効果があるのか?

にんにくの成分が入っているわけではない
にんにくの成分が入っているわけではない(C)日刊ゲンダイ

 忙しいビジネスマンやOLの間で「疲労回復に効く」と評判の注射だが、最近はあまり聞かない。どうなっているのか? サラリーマンの病気に詳しい「弘邦医院」(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「スポーツ選手の間で人気になっていましたが、『正当な医療行為でない点滴や静脈注射はドーピングとみなす』ことになり、以前ほど話題になっていません。しかし、一般の方には依然として人気です」

 にんにく注射はもともとスポーツ選手や忙しい芸能人の間で人気だったものがサラリーマンやOLなどに広まったもの。風邪をひいたときや疲れているときに使われることが多い。その名から、にんにくをすりつぶした成分が入っているのではないか、と思う人がいるが、そうではない。

「主な成分はビタミンB1で、ほかのビタミンB群やビタミンCなどが入っています。ただし、医療機関ごとに成分は少し違います。注射後に、にんにくのにおいがするというのでこの名前がついたとされていますが、にんにくが入っているわけではありません。ビタミンB1は炭水化物(糖質)をエネルギーに変える働きをするので、これが不足するとエネルギー不足になり元気がなくなってしまうのです。また、ビタミンB1には疲労物質である乳酸を除去する働きもあります」

 分解されなかった糖質は脂肪として体の中に蓄えられて肥満になるうえ、注射により新陳代謝が高められることから、内科だけでなく、美容系の診療科で人気がある。副作用はどうか。

「余剰なビタミンは尿として排出されるため副作用は基本的にありません。ただ、まれにアレルギー反応や下痢などを起こすことがあります」

 にんにく注射の効果に懐疑的な医師もいるが、どうなのか?

「『疲れているのなら、休息してビタミンB1が豊富な食べ物か、ビタミン剤を取ればいい、注射をする必要はない』というのはもっともな意見です。しかし、注射の方が体への吸収が早いし、どのようなビタミンが必要なのか分からない人も多い。『わざわざ注射を打った』というプラセボ効果もあるのでしょう。その意味でにんにく注射を必要としている人は多いと思います」