明細書が語る日本の医療

子宮全摘の都道府県格差 トップは2位以下に大差つけた東京

子宮悪性腫瘍手術(子宮全摘術)の多い県と少ない県
子宮悪性腫瘍手術(子宮全摘術)の多い県と少ない県(C)日刊ゲンダイ

 子宮がんの手術で大変なのは子宮悪性腫瘍手術(子宮全摘術)。子宮体がんと、一部の子宮頚がんが対象になります。子宮がんの都道府県格差を見るために、女性人口10万人当たりの手術件数を計算し、<表>にまとめました。子宮体がんでは、子宮付属器(卵巣・卵管など)も一緒に切除します(子宮付属器悪性腫瘍手術)。そこで子宮全摘術に対するその割合も載せておきました。

 2014年度における子宮全摘の全国件数は約1万5000件。女性10万人当たり23.4件になります。そのうちの約8800件(58.0%)で付属器の切除が行われました。

 子宮全摘が最も多かったのは東京都です。女性10万人当たり年間33・2件に及び、2位以下に大差をつけています。といっても「東京都の病院で行われた手術」の件数であって、東京都民が受けた手術の件数ではありません。件数が多いのは、全国から患者を集めていることの証拠です。大阪府や福岡県も同様の理由で上位に入っているのでしょう。

 実際、東京都に隣接する埼玉県と山梨県が、少ないほうの1位と2位を占めていますし、3位の佐賀県は、福岡県に隣接しています。1位の東京都と最下位の埼玉県の差は2・25倍に達しています。

 全摘術の多い県のほうが、付属器切除の割合が低い傾向がみられます。東京都、大阪府などの例外を除けば、ほとんどが全国平均よりも低い数字を示しています。子宮頚がんの全摘術では、付属器切除はあまり行われません。つまり付属器切除の割合が低い県は、子宮頚がんの全摘術が多いことを示唆しています。逆に全摘術の少ない県のほうが、付属器切除の割合が高い傾向になっており、子宮頚がんの全摘術が少なかったことを示唆しているのです。

 上位5位の香川県や9位の鹿児島県は、子宮全摘の半分以上が子宮頚がんだった可能性があります。下位2位の山梨県、6位の富山県、9位の岡山県などは、全摘に占める子宮頚がんの割合が3割前後にすぎなかった可能性が高いのです。

 子宮がん検診の受診率との相関を見ましたが、これといった傾向はありませんでした。この違いは各県の医療技術や医師の判断のバイアスによるのかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。