重篤な病気起こすことも 心臓カテーテル検査を甘く見ない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 動脈硬化が引き起こす病気が増えている。代表的なのが「心筋梗塞」や「狭心症」だ。心臓の筋肉に血液を送っている動脈に硬化が起こり、必要な血液量が送れなくなる。それを詳しく調べるための検査のひとつが心臓カテーテル検査だ。基本的に安全な検査だが、まれにその検査が引き金となって重篤な病気を引き起こす場合がある。心臓カテーテル検査を勧められたら、どう考えたらいいのか? 東邦大学名誉教授で平成横浜病院検診センターの責任者を務める東丸貴信医師に聞いた。

 中村忠雄さん(仮名、53歳)は昨年夏、都内の病院に脳梗塞で入院した。身内が相次いで心臓病を患い亡くなったことを気にしていた中村さんは「心臓病が心配」が口癖で、定期的に心臓超音波検査や心電図検査を受けていた。そのたびに「問題なし」と言われてきたが、昨年春ごろから「何となく心臓が重い」と感じ、「念のため」で受けた心臓カテーテル検査直後に脳梗塞を発症した。

「心臓カテーテル検査は、ホルター心電図測定や超音波心臓検査、心臓CTなどではよくわからない点を明らかにするための検査です。局所麻酔をしてから直径1・5ミリ程度のカテーテルを足の付け根や手首などから入れて、心臓まで進めます。そして心臓内の圧や血液の酸素濃度を測定・分析したり、造影剤注入によるX線撮影をしたりして、心臓の形、心室の動きや弁の機能を調べ、冠動脈の造影検査で血管の詰まり具合などを調べます」

 その結果、血管が狭くなったり、詰まっていたりする場所がわかれば、治療法が決まる。たとえば血管をバルーンとステントで広げる冠動脈形成術を行うのがいいのか、バイパス手術がいいのかなどはこの検査で最終判断されるという。

「ただし、心臓カテーテル検査はとても有益な検査ですが、100%安全な検査ではありません。カテーテルが心臓や動脈の壁を傷つけたり、造影剤による心臓の収縮力の低下、不整脈や腎機能障害が起きたりすることがあります」

■事故率は低いが起きれば深刻

 実際、心臓カテーテル検査で死亡する確率は0.05%、脳梗塞、心筋梗塞、不整脈、造影剤によるアナフィラキシーショックなどの重篤な合併症を起こす確率は0.2%程度あるといわれている。特に多いのが脳梗塞で、カテーテルが大動脈壁や大動脈弁を傷つけて、動脈壁のプラークや血液の塊が飛び、脳を直撃してしまうことがある。

 事故率は低いとはいえ一度起こってしまえばその被害は深刻だ。しびれや麻痺の後遺症が残ったり、寝たきりになったり、最悪、亡くなるケースがまれとはいえある。

「問題は、これらの合併症は医療ミスがなくても一定の確率で起きるということです。命に関わる心臓病が疑われる患者さんのための検査なので、検査を受けない場合のリスクが合併症リスクよりはるかに高いのが普通です。だからといって患者さんは、医師任せの気持ちで受けるべき検査ではないことを理解しなければなりません。最終判断は患者さんが行い、その結果は自身の責任となりますから、万一の時に、大変な思いをしないよう、医師や看護師からよく話を聞いて、危険性と必要性をよく理解した上で、検査を受けるべきです」

 高齢化が進む中で、検査の重要性はますます高まっているが、病院が行う検査の中には危険が伴うものがあることも知っておくべきだ。

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