がんと向き合い生きていく

「悪性リンパ腫」には様子をみていいタイプもある

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 治療は抗がん剤治療が中心です。限局した箇所には放射線治療が行われることもあります。瀰漫性B細胞型の5年生存率は、限局している場合(Ⅰ、Ⅱ期)は85%以上、進行期(Ⅲ、Ⅳ期)でも55%以上です。治療によってリンパ節の腫大が完全に消えきるかどうかが予後に関わってきます。

 悪性度の高いT細胞型やバーキット型のタイプでは、リンパ節の腫大は急激に進行し、治療に抵抗して重症となる場合が多くあります。一方、濾胞性リンパ腫は多くが低悪性度ともいわれ、状態によって治療法、経過が大きく違います。治療なしで経過を見る場合もあり、進行期(Ⅲ、Ⅳ期)では、治療によってリンパ節の腫大が完全に消えることはなかなか難しいのですが、それでも多くは長期(5年以上)の生存が期待できます。

 また悪性リンパ腫は、リンパ節以外にも胃、乳腺、鼻腔等に発生することがあります。特に胃では、MALTリンパ腫の場合はピロリ菌の除菌だけで治る場合もあります。

 悪性リンパ腫といってもさまざまなタイプがあり、すぐに命に関わる場合もあれば、経過を見てもよい場合もあるのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。