明細書が語る日本の医療

膀胱・腎臓がんの男性年齢別手術件数 内視鏡手術が多い理由

男性の膀胱がん・腎臓がんの年齢別手術件数(C)日刊ゲンダイ

 しかし、TURBTも万能ではありません。がんを完全に取り切れず、再発することが少なくないため、何度も受ける患者が大勢いるのです。表の数字を見ると、50代以上における件数が、上皮内がんを加えた新規患者数の2倍以上であることが分かります。また、膀胱は筋肉でできた袋状の臓器で、TURBTはがんの周囲の筋肉も一緒にそぎ落としてしまうため、回数を重ねるごとに筋層が薄くなっていきます。回数にはおのずと限界があるということです。

■膀胱がん対象の内視鏡には回数の限界あり

 腎臓がんの新規患者は40代で1000人を超え、60代までは倍々で増えていきます。患者のピークは70代ですが、80代でがんが見つかる人も3000人近くいます。

 がんに侵された側の腎臓を全摘するのが一般的です。腎臓は左右合わせて2個あるため、片方を取っても日常生活に支障は生じません。開腹術か腹腔鏡かは、周囲の組織やリンパ節への浸潤・転移があるかどうかなどで決まります。手術のピークは60代から70代で、新規患者の実に95%が受けている計算になります。他に重大な病気を抱えていたり、手術ができないほど進行していたりしていない限り、ほぼ全員が手術を受けると考えてよさそうです。

2 / 2 ページ

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。