受診までの「応急処置」

【突然の腹痛】市販の消炎鎮痛剤を使ってはいけない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「腹痛」といっても、さまざまな病気が考えられる。夜間などすぐに受診できる状況でない場合、どのような応急処置をとるべきなのか。消化器病専門医で「山村クリニック」(東京・茗荷谷)の山村進院長が言う。

「今まで経験したことのない激しい腹痛であれば、夜間でもためらわず救急車を呼ぶべきです。しかし、さほど強くない腹痛で下痢や吐き気、嘔吐(おうと)を伴う場合は食中毒の可能性が高い」

 食中毒は発症までの潜伏期間が病原体の種類によって異なるので、原因に身に覚えのないケースも多い。しかし、食中毒の疑いがあれば取りあえず下痢止めは飲んではいけない。病原体の細菌やウイルスの排出を止めてしまうからだ。

「食中毒の対処で最も大切なのは、下痢や嘔吐で水分が失われるので、こまめに水分補給をして脱水を防ぐことです。そして、安静にして症状の嵐が過ぎ去るのを待つしかありません」

 腹痛に対しては、もし市販の常備薬があれば、ファーストチョイスは「鎮痙(ちんけい)薬」。痛み止めの「消炎鎮痛薬(エヌセイズ)」は勧められないという。

「消炎鎮痛剤は胃や腸の粘膜を荒らしてしまいます。特に十二指腸は薄いので、潰瘍があって穴が開いてしまうと緊急手術が必要になります」

 これらの応急処置をして、翌日まで腹痛が続くようなら受診した方がいいという。下痢や嘔吐がなく、食後に上腹部(胃の辺り)が痛くなるような腹痛の場合には、胃・十二指腸潰瘍の可能性がある。

「食後に痛みが出るのは胃酸が多く分泌されるからです。市販薬では『H2ブロッカー』が有効です。ただし、大便が黒くなる『タール便』の症状があれば、胃や十二指腸からの出血が疑われるので早く受診した方がいい」

 そして、「経験したことのない激しい腹痛」は命に関わるので、一刻も早い受診が重要になる。たとえば「腸閉塞」。腸への血流が障害されている場合には、時間の経過とともに腸が壊死(えし)してしまう。1日放置したら危ないという。激しい腹痛に嘔吐は伴うが、腸が塞がれているのでオナラが出ないのが特徴だ。

「他にも、実際には消化器系の病気ではないのに、激しい腹痛を訴える重篤な病気があります。心筋梗塞ではみぞおちの辺りが痛くなり、大動脈解離では胸から下腹部にかけての痛みや背部痛。下痢や嘔吐を伴わない激しい腹痛は循環器系の病気の恐れがあるので、十分注意してください」