当事者たちが明かす「医療のウラ側」

地方に進学校をつくることが医師不足解消の早道になる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
都内の40代医師

「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」の結果が4月に公表されました。調査は昨年12月に行われ、約1万6000人の医師が回答しました。分かったのは、地方で働きたい医師はいるのに、子供の教育のために二の足を踏んでいる実態です。

 実際、東京23区・政令指定都市・県庁所在地などの都市部以外の地方に将来、勤務する意思があるか否かを聞いたところ、44%の医師が「ある」と答えています。また、50歳以下の医師に「地方で何年働く意思があるのか」と尋ねたところ、「10年以上」と答えた医師は30%近くいます。

 では、なぜ医師は希望通りに地方で働かないのでしょうか? 30代・40代の医師に聞いたところ、1位が「子供の教育への不安」でした。「希望する内容の仕事ができない」「労働環境への不安」「専門医資格の取得の不安」などよりも、「子供の教育への不安」が上回っていたのです。

 現状では「自分の子供に十分な教育を受けさせて、高い学力とスキルをつけさせるには、地方に住んでいてはダメ」と子育て世代の医師は考えているのです。

 無理もありません。今は塾にも行かず、学校と家庭の勉強だけで医学部に合格するのはかなり難しい。もし、医師が自分の子供にも医師になってもらいたいと思えば、医学部進学専門の塾に通わせるのも当たり前で、そういう塾は都市部にしかないのです。そもそも、地方では医師を希望する子供が少なく、競争原理も働きません。よほど意志の強い子供でなければ、学校の勉強だけで医学部への進学は難しいのでしょう。

 逆に言えば、医学部に合格させるだけの高い学力をつけさせる学校があれば、地方といえども医師は集まってくる可能性があるということでしょう。

 進学校をつくることが、医師不足を解消する早道かもしれません。