天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

手術で救えるのは患者本人だけではない

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 エーラス・ダンロス症候群による心血管疾患の突然死を防ぐには、まずは専門的な施設でしっかりと鑑別診断を受けることが大前提で、定期的にCTなどの検査を行い、リスクの高い病変があれば早期に対処することが必要になります。

 女性だけにみられる「ターナー症候群」も心臓や血管にトラブルを起こしやすい先天性疾患です。染色体異常の一種で、本来なら2つあるべきX染色体の一方が不完全だったり、完全に欠けていることで起こります。

 新生児期の四肢の浮腫、著しい低身長、無月経など第2次性徴の欠如などの症状が特徴です。約20%の患者さんは先天性心疾患を伴い、大動脈縮窄症、大動脈二尖弁、大動脈弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症といった疾患が多くみられます。ターナー症候群の患者さんは内臓の器官が正常に発育できないため、血管や心臓が奇形化しやすく、正常な働きができなくなってしまうリスクが高くなるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。