Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

肺がん4期の大林宣彦さん 余命3カ月を“未定”にした治療は

大林宣彦さん(C)日刊ゲンダイ

 従来の抗がん剤がじゅうたん爆撃のように攻撃するイメージなら、これらはピンポイント攻撃のイメージ。“攻撃対象”が絞られることで、これらの薬は比較的副作用が軽い。「撮影と並行しながら治療」できたのはそのためでしょう。

 しかも、それぞれの薬に最適な患者の特徴が分かってきたことで、高い治療効果を挙げるケースがあるのです。大林さんは、そこにうまく合致した形でしょう。

 では、どんな人に薬がよく効くのか。そこが今回のポイントで、遺伝子検査がカギを握っています。たとえば、イレッサの効き目が高いのは、EGFR遺伝子が変異している人。薬の手引などには「EGFR遺伝子変異陽性」と書かれます。その変異があり、手術不能か再発した非小細胞肺がんの方が対象です。

 同じようにほかの9種類についても、薬にマッチする遺伝子の特徴が分かっています。逆にいえば、遺伝子検査の結果から薬にマッチしないと判明したら、これらの薬は使いません。薬の適応を調べる遺伝子検査はとても重要です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。