有名病院 この診療科のイチ押し治療

【スポーツ選手の傷害】同愛記念病院・整形外科(東京都墨田区)

同愛記念病院整形外科の土屋正光院長
同愛記念病院整形外科の土屋正光院長(提供写真)
大相撲、プロ野球、サッカー、柔道など「協会ドクター」が勢ぞろい

 同科は特に関節疾患に強く、「上肢班」「股関節班」「膝足班」の3グループで専門的な診療を行っている。そして、スポーツ選手の傷害(外傷・障害)の治療経験が豊富な施設として知られる。在籍する医師は、日本相撲協会医務委員、プロ野球・日本ハムファイターズやアメフトのチームドクター、日本サッカー協会医学委員、全日本柔道連盟医科学特別委員などの役職をもつ。

 意外なことだが、大相撲力士の患者が増え始めたのは、国技館がまだ蔵前(東京都台東区)にあった1980年代からだ。同科の土屋正光院長が言う。

「昔の力士はケガをすると接骨院で治療していました。当科に力士の患者さんが増えたのは、82年、当時の院長が大関朝潮関(4代)の治療を担当していて、その関係で高砂部屋のケガをまとめて診てほしいと頼まれてからです。84年に富士桜関がアキレス腱断裂で復帰は半年後とみられましたが、2場所(4カ月)の休場で勝ち越しました。それで、多くの力士の患者さんが来院されるようになったのです」

 ただし、力士となると一般人の肥満とは違い体全体的に筋肉量が多く、重量、厚みがあるので同じ関節鏡下手術をするにしても工夫が必要になる。手術台は2台並べて行う場合もある。

「体が大きく厚みがあるため、関節鏡の操作がしやすいように患者さんの体の位置を変えたり、関節内までの距離があるので手術時間も通常よりかかります。麻酔も通常より長い針を使い
技術を要します。また、麻酔薬は脂肪に溶ける性質があることから普通の人より覚めにくい。抗生物質の投与も体表面積で補正し、大体5割増しです」

 車イスも通常のものでは体が入らないため力士用の特注品を用意。ベッドはさすがにキングサイズとはいかないので、台を追加するなどで長さを調節している。

■小さい切開でも済む関節鏡下手術なら翌日からリハビリが開始できる

 ちなみにプロ野球チームとのつながりは、86年に土屋院長が多くのプロ野球選手に肘の靱帯再建術を行っていた故フランク・ジョーブ博士のもとへ見学のため渡米したのがきっかけ。当時の日本ハムの選手がたまたまジョーブ博士の治療を受けていて、同伴していたゼネラルマネジャーと土屋院長が知り合った関係でチームドクターを依頼されたという。

「当科では関節疾患で手術が必要なものは、ほとんど関節鏡下手術で行っています。関節の周囲に1センチ程度の小切開を2~3カ所おき、内視鏡の一種の関節鏡を挿入して行う手術です。特にスポーツ選手なら、早期復帰しないと選手生命に関わります。小さい切開で済む関節鏡下手術なら、翌日からリハビリが開始できます」

 とはいっても、患者の中心は近隣の地域住民。スポーツをしたくても膝などの関節が痛くてできないなどの人は、気軽に受診してもらいたいという。

「特に野球をやっているお子さんは『野球肘』に注意してください。少しでも肘が痛いのであれば、早めに整形外科を受診させた方がいい。痛いのに、成長期に無理にやらせていると、後に野球ができなくなる可能性があります。高校2年生までは成長を待って、野球を休ませた方がいい場合があります」

■データ
関東大震災(大正12年)のときに米国から送られた義援金をもとに、1929(昭和4)年に開院。
◆スタッフ数=常勤医師11人(日本整形外科学会専門医8人)、非常勤医師2人
◆年間初診患者数(2016年)=3680人
◆年間手術件数(同)=1116件