堤下も発症 長引く「じんましん」と手を切れる新薬の効果

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 睡眠薬を服用してクルマを運転し、意識がもうろうとした状態で発見されたお笑いコンビ「インパルス」の堤下敦(39)は、「じんましん」のかゆみで眠れないことから薬を処方されていたという。じんましんは皮膚疾患の中でも生活の質(QOL)を著しく低下させるが、最近、新薬が承認され、QOLが改善するのではとみられている。じんましんの現状と治療は――。

■4分の3は原因不明

「じんましんは突然発症し、長くても3日以内に消える。いったん出て消えるのはいいように思えますが、それが続くことが患者さんにとって、しんどく、苦しい」

 こう言うのは、広島大学医歯薬保健学研究科皮膚科学・秀道広教授だ。

 じんましんはすべての年齢層で見られ、全人口の15~20%が一生のうち一度は経験する。何らかの刺激がきっかけになるが、食べ物、薬、昆虫の毒など原因がはっきりしているのは4分の1で、残り4分の3は原因が見当たらない「特発性じんましん」(広島大学じんましん患者260人の集計から)だという。

「特定の刺激であれば、それを避けていれば、じんましんは起こりません。一方、特発性じんましんは自然に出るので避けようがなく、原因というより悪化因子があり、ある人は疲れ、ある人はストレスで症状が出る。悪化因子に気を付けるとともに、薬物治療が必要です」

 特発性じんましんの治療は、①抗ヒスタミン薬②補助的治療薬(漢方薬・抗不安薬・H2拮抗薬・抗ロイコトリエン薬など)③副腎皮質ステロイド④免疫学的治療などの4段階で進められる。

 ところが、②~④の大部分が保険適用外。加えて②の一部の薬と、③と④両方の治療は、重篤な副作用のリスクがある。つまり、「いかに抗ヒスタミン薬をうまく使うか」が重要になってくるが、慢性例では治療成績があまり良くない。

 研究によれば、発症後1カ月以内の急性じんましんで、発症後1週間以内に医療機関で治療を開始すると、1週間以内に73%、4週間以内に85%、1年以内に93%の患者が治る。

「ところが、一部は慢性じんましんに移行します。発症後6週間以上経過し、1種類の標準量の抗ヒスタミン薬で症状が消えない場合は、1年経っても治癒率は10%超なのです」

 2年目で治癒率は14%弱、5年目で治癒率は28%弱。大方の患者は“出ては消える”を繰り返し、打てる手といえば、抗ヒスタミン薬を飲むか、保険適用外で副作用のリスクのある治療に臨むかしかない。

 製薬会社が行った調査では、多くの患者が「症状が完全になくならない」「根治しない」点に不満を抱えていた。

「生活の質は著しく下がり、イライラ、ストレス。眠りを妨げられる、集中できない、などの声があります」

■従来薬とは違うメカニズム

 今回、承認された新薬「オマリズマブ(商品名ゾレア)」は、従来薬とは違うメカニズムで作用する。血中のIgEと呼ばれる物質と結合し、IgEが皮膚炎症の原因となるマスト細胞と結合できなくする。炎症を根本から抑え、じんましんを起こらないようにするのだ。

 日韓合同の臨床治験では、4週間ごとに300ミリグラムの投与を3回行い、12週間の追跡調査を行った。

「結果は、症状がまったくなくなる完全寛解が35%、コントロール良好が57%。どの薬を使ってもよくならない人が対象なので、明らかな効果が見られました」

 新薬治療の対象になるのは、特発性じんましんのうち慢性化したもの。症状の程度は関係なく、今までの治療で効果不十分の場合で検討される。12歳未満は残念ながら現段階では対象外となる。

 副作用として、皮下注射のため注射部位の赤みや腫れが予想されている。また、頭痛、鼻咽頭炎なども報告されている。

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