明細書が語る日本の医療

胆のう・胆管がん 男性は若くして女性は高齢で発症する

2015年に亡くなった女優の川島なお美さん(C)日刊ゲンダイ

 男性の罹患率は1985年以降、ずっと9.5から10.5の間くらいにとどまっています。近年の患者増はすべて高齢化が進んだことによるものと言えるでしょう。対して女性の数字は1980年代前半までは男性とほとんど同じでしたが、その後はジワジワと下がり続けています。死亡率のほうは、男女とも世紀の変わり目前後から減少し続けています。

 胆管は肝臓でつくられた胆汁(脂肪の吸収を助ける消化液)を十二指腸まで送り出すチューブ、胆のうはその途中にあって胆汁を一時的に蓄えておく袋状の臓器です。合わせて「胆道」と呼ばれることもあります。

 胆管は太さ1センチ、長さ十数センチ程度のチューブ状の臓器、胆のうは長さ10センチ、幅数センチのナス状の小さな臓器です。お腹の中心にあって、周辺には血管やリンパ節が密集しているため、膵臓や肝臓などの周辺臓器や、腹膜に転移(腹膜播種)しやすいことが知られています。

 とくに腹膜播種は、がん細胞が腹膜全体にまき散らされた状態で、予後はかなり厳しくなります。この段階で医師から余命宣告を受けることが少なくありません。2015年に亡くなった川島なお美さんも胆管がんで、最後は腹膜播種だったのではないか、ともいわれています。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。