がんと向き合い生きていく

がんの骨転移による下肢麻痺は発症から48時間以内が勝負

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 がんが脊髄を圧迫して下肢が動かなくなってから48時間以内に手術を受け、その圧迫がとれれば麻痺は回復する可能性があります。その48時間が勝負です。ただ、本当に元通りに回復するかは手術してみないと分かりません。Tさんは幸いなことに手術が間に合い、無事に回復されたのです。

 脊髄を圧迫しているがんの手術では、がんが肺や他の臓器にたくさんあった場合など手術できないことが多くあります。

■溶骨型の骨転移は骨折しやすくなる

 また、手術を行ってもがんが取り切れない、手術がうまく成功しても麻痺は治らないこともあります。これまで、麻痺がきても手術で回復した方、そのまま麻痺が残った方、そのどちらも目にしてきました。

 その先、完全に下半身が麻痺したまま暮らすのか、歩いて生活できるのかどうかは患者さんにとって大きな違いです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。