まだMRI検査ができなかった時代に、こんなことがありました。肺がんの治療で入院中だったBさん(68歳・男性)が、金曜日の午後に「下肢の動きがおかしい」と言い出し、土曜日の朝には歩けなくなってしまったのです。48時間が勝負ですから、月曜日までは待てません。外来診察で忙しい整形外科医に拝むように頼み込み、脊髄腔に造影剤を投与する検査を行って、がんによる圧迫のある場所を確定できました。
土曜日の午後、放射線治療の準備をしながら、脊髄の圧迫を取り除く手術が夜中まで行われ、Bさんは元通りに歩けるようになりました。その時の喜びも忘れられません。
かつては、肺がんで再発、あるいは骨転移での症状が出てきた時、多くの場合はがんの進行を抑える、痛みの症状を緩和するのが精いっぱいだったようにも思います。それが、手術によって麻痺を取り、歩くことができるまでの回復も望めるようになりました。
がんと向き合い生きていく