がんと向き合い生きていく

がんの骨転移による下肢麻痺は発症から48時間以内が勝負

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 冒頭で紹介したTさんの再発した肺がんは、骨転移以外は薬で消失していました。それなのに、下肢の麻痺まで症状が悪化しました。再発、骨転移、下肢の麻痺とすべてを告知され、それでも麻痺の症状が取れて歩けるようになったTさんの気持ちはどんなものだったでしょう。また、「生きる」希望が湧いたに違いありません。

 がんの骨転移で最も多いのは乳がん、そして肺がん、前立腺がんです。乳がん、肺がんなど、がんが骨に転移した場合、そして多発性骨髄腫では骨が破壊されて崩れるような転移(溶骨型)となり、とても骨が折れやすくなります。一方、前立腺がんが骨転移した場合は造骨型となり、硬くて骨折しにくいという違いがあります。

 多発性骨髄腫の患者さんのお話ですが、入院中にベッドで起き上がろうとして体を支えるためにテーブルに右手をついて右前腕を骨折、あわてて左手をついたら左上腕を骨折し、一度に両腕が使えなくなってしまったという悲劇もありました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。