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胆のう・胆管がん手術を受けられる患者はごく一部

胆のう、胆管がんに対する手術
胆のう、胆管がんに対する手術(C)日刊ゲンダイ

「胆管」は肝臓でつくられる胆汁を十二指腸に運ぶ管、「胆のう」はその途中で胆汁を一時的に保存する袋状の臓器です。どちらのがんも、手術は全摘が基本になります。2014年度の手術件数を表にまとめました。

 件数がかなり少ないことに、すぐにお気づきになったはずです。胆のう・胆管がんの新規患者数は2012年において男女とも約1万2000人。

 2014年度には、これより少し増えているはずです。ところが合計手術件数は男性で約1800件、女性では1400件に達していません。つまり、新規患者のうち実際に手術を受けているのは男性で15%、女性で11%ほどに過ぎないということです。胆のう・胆管がんは、何らかの自覚症状が出たときには、すでに手遅れになっているケースが多いといわれています。また患者の多くが実はかなり高齢で、手術に耐えられない、耐えられても術後の回復が困難などの事情を抱えているのです。

 その他に、胆石などで胆のう全摘を受けた際に、偶然がんが見つかることがあります。その場合、患者は「胆のうがん」として登録されます。胆のうがんの新規患者のうち、男女合わせて800~1000人ほどが、そのようにして見つかっています。この場合は、がんが胆のう内にとどまっているため、追加の手術は行われません。

 胆のうがんの手術は、切除範囲によって数段階に分かれています。もっとも軽い手術では、胆のうと隣接するリンパ節のみを切除します。しかしがんの浸潤範囲が広まるにつれて、肝臓の一部、膵臓(膵頭部)、十二指腸など周辺臓器の切除も必要になってくるのです。

 胆管がん手術は、がんの位置によって「胆管悪性腫瘍手術」と「肝門部胆管悪性腫瘍手術」に分かれています。しかしいずれも胆管だけでなく、肝臓の一部や膵臓、十二指腸など周辺臓器や組織を含めた大規模な手術になります。

 胆管がんの手術は、消化器がんの中で最も難易度の高い手術のひとつとされています。2015年に亡くなった川島なお美さんは、それを開腹ではなく、より難しい腹腔鏡で受けたといいます。とはいえ術後1年半も生存できたのですから、手術自体は成功だったと考えられます。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。