受診までの「応急処置」

【吐き気】我慢せずに吐きたいだけ吐いてしまう

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「吐き気・嘔吐(おうと)」は、胃の中にある有害物質や胃に負担をかけているものを排除しようとする体の防御反応だ。ただし、すべて胃に原因があるとは限らない。

 消化器病専門医で「山村クリニック」(東京・茗荷谷)の山村進院長がこう言う。

「平衡感覚に関わる内耳の障害、脳腫瘍や頭蓋内出血などによる脳圧の上昇、細菌やウイルスの感染による髄膜炎、急性緑内障などでも吐き気の症状が出ます。消化器系の病気を疑う場合、『腹痛』や『下痢』を伴うかどうかがポイントになると思います」

 吐き気・腹痛・下痢の3大症状がそろえば、たいがいが食中毒、もしくはノロウイルスなどの感染性胃腸炎だ。ただし、ノロウイルスは小腸上部で増殖するので、嘔吐の方が激しくて、目立った下痢症状を伴わないケースもあるという。

「下痢も同じですが、嘔吐は体内の増殖した細菌やウイルス、毒素などを排出させようとする反応です。吐き気を催したら我慢せずに、吐きたいだけ吐いてしまうのがいい。その際、嘔吐物をのどに詰まらせたり、気管に入ったりしないように注意してください」

 もうひとつ注意すべきなのは、嘔吐物の処理。ノロウイルスだった場合、嘔吐物(下痢便にも)に大量のウイルスが含まれる。部屋の中に吐いてしまったら、きちんと掃除しないと、容易に家族や周囲の人に感染を広げてしまう。処理する人はマスク、手袋、エプロンを着け、塩素系消毒剤や家庭用漂白剤で吐いた場所を十分に消毒する。嘔吐物が付着した衣類なども消毒が必要だ。

「胃の内容物を吐き切ったら、楽な姿勢で安静にしてください。吐き気があるうちは食事をしない方がいい。その分、脱水状態にならないよう十分に水分摂取をしてください。水分の取り方は、ゴクリゴクリと飲むと吐いてしまうので、口に軽く含む飲み方をこまめに繰り返してください」

 ただし、吐き気・嘔吐に血性下痢(ほとんど血液の下血)を伴う場合には、重症化の恐れがあるので様子を見ずに、早く受診した方がいいという。また、血性下痢がなくても、翌日になって少しも症状が改善しないようなら受診しよう。

「高血圧や糖尿病などで持病の薬が合っていなかったり、病状がコントロールできていないと吐き気を催す場合があります。持病があって吐き気のあるような人は、きちんとかかりつけ医に伝えることが重要です」