明細書が語る日本の医療

胆のう・胆管がん手術 40代以下が「件数ゼロ」の理由

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 胆のう・胆管がんの性別年齢別手術件数(2014年度)と新規患者数(2012年度)を<表>にまとめました。男女とも40代以下の患者が150人前後います。最も若い患者は、女性で20代前半に1人、男性では30代前半に1人となっています。しかし、50歳より前にこのがんにかかるリスクはかなり低いといえます。50代以降で患者は急増し、男女とも80代以降でピークに達します。特に女性では、新規患者の実に56%が、80代以上の高齢者で占められています。「肺」「胃」「大腸」などのメジャーながんと比べると、かなり発病年齢が遅いがんといえますし、加齢こそがこのがんの最大の原因ともいえるのです。

 根治の可能性のある治療法は、今のところ手術だけです。しかし、その件数は限られています。40代以下では、男女ともゼロ。胆のう・胆管がんは自覚症状が少ないため、発見された時にはすでに他の臓器に転移しているなど、手術できないケースが多いことで恐れられています。特に若年層は、がんの進行が速いことなどもあって、手遅れになるケースばかりなのでしょう。

 手術のピークは男女とも70代です。それでも新規患者の20%程度が手術を受けているに過ぎません。また80代以上は、男性が7%、女性では5%未満にとどまっています。

 手術できたとしても、いずれもかなり大がかりなものになります。胆のうや胆管だけでなく、肝臓の一部、膵臓の一部、十二指腸なども併せて切除します。特に胆管は膵臓(膵頭)の内側を通っているため、胆管がん手術では膵頭部の切除がほとんど必須です。がんの広がりによっては胃や大腸の一部まで切り取ることもあります。そのため他の重大な疾患がなく、体力的に耐えられるなどの条件をクリアした患者のみが、手術を受けることができるのです。しかし手術を受けられても、5年生存率は40%程度といわれています。

 他に放射線と抗がん剤があります。ただ放射線の効果は定かでなく、あまり効かないという医師もいます。また、抗がん剤は進行を一時的に食い止める効果はありますが、残念ながら根治させる力はありません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。