役に立つオモシロ医学論文

高卒未満は50%が発症 「高学歴」ほど心臓病になりにくい

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日本は公的な保険制度が整っており、国民が医療を受けやすい状況にあるといえます。こうした環境にいるとあまり意識されませんが、世界的に見ると、教育格差や経済格差が健康面にもたらす影響は決して小さくありません。

 過去の研究では、教育の質が向上することで、より健康的な行動に結び付けることができる可能性が示されています。

「学歴」と「心臓病発症の生涯リスク」について検討した研究論文が、米国医師会の内科専門誌の2017年6月12日付に掲載されました。

 この研究は米国在住の45~65歳で、研究開始時に心臓病の発症がない13万948人が対象となりました。学歴は、「中学校卒業程度」「高校中退」「高校卒業程度」「専門学校」「大学進学(卒業の有無にかかわらず)」「大学院」の6つのレベルに分類されています。

 研究の結果、学歴が低いと将来的に発症する心臓病の確率が高くなることが示されました。85歳までに起こり得る心臓病発症の確率は、男性では、中学校卒業で59.0%、高校中退で52.5%、高校卒業で50.9%、専門学校で47.2%、大学進学で46.4%、大学院で42.2%でした。また女性では、中学校卒業で50.8%、高校中退で49.3%、高校卒業で36.3%、専門学校で32.2%、大学進学で32.8%、大学院で28.0%でした。

「高校を卒業していない人の2人に1人が、生涯において心臓病を経験しうる」という衝撃的な結果となっています。もちろん、学歴そのものが心臓病を引き起こしているわけではありません。社会経済的要因等により高等教育に恵まれなかった人たちでは、教育を受けることができた人に比べて、健康的ではない環境での生活を余儀なくさせられている一面をうかがわせるものと言えそうです。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。