Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

野際陽子さんが肺腺がんに手術ではなく放射線を選んだら…

享年81(C)日刊ゲンダイ

 もうひとつ、たばこの影響が強いCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の軽症の人は、肺腺がんになりやすいのです。

 野際さんは過去にたばこを吸っていたという報道もありますから、その影響は否定できません。皆さんが気になるのは、治療法でしょう。

 胸腔鏡手術は、メスで開胸することなく手術できるので、体の負担が軽く、がんを十分に切除できるケースなら高齢でも胸腔鏡手術が行われることは少なくありません。野際さんがそうだとは限りませんが、常に第一線の舞台に立ち続けていたことから考えると、その可能性は高い。

 それでもがんは進行したのでしょう。2度目の手術が行われています。いくら肉体的な負担が少なくても、切除に伴う呼吸機能の低下は避けられません。2度目の手術後は、呼吸のつらさから、酸素吸入器を携行していたという週刊誌報道も見られます。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。