2万人調査で4割が…肩凝り・頭痛・腰痛はうつ病の始まり

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「疲れが取れない」「肩凝りがひどい」「あまり眠れない」――。家族や同僚が口にしたら、軽く聞き流してはいけない。ひょっとしたらうつ病が隠れている可能性がある。

 うつ病の症状といえば、「気分の落ち込みが続く」「以前は楽しかったことが楽しくない」といった精神的な症状がまず頭に浮かぶ。しかし実際は、「もしかして、うつ病かもしれない」と自覚する典型的な症状は少なく、うつ病の可能性があっても、気付いていない人が非常に多い。塩野義製薬の調査で明らかになった。

 調査に協力した男女20~69歳1万9975人のうち、「うつ傾向がある」とされた人は実に約4割。用いたのはうつ病のスクリーニング法「二質問法」で、最近1カ月間で「気分が沈んだり、憂鬱な気持ちになることがよくあった」「物事に対して興味がわかない、心から楽しめないことがよくあった」に、イエスかノーで答える。

 続いて「うつ傾向がある」人に不調の有無を質問すると、7割以上が「疲労倦怠感」「肩の痛み」「睡眠障害」「頭痛・頭重感」の身体的不調を「よくある」「ときどきある」と回答。「腰の痛み」「首の痛み」「食欲不振または過食」「腹痛」もあり、いずれもうつ傾向のない人の訴えを上回った。

 精神的不調では、抑うつ気分に加えて「体のあちこちが重く感じる」「不安でいてもたってもいられない」「話や本の内容が入ってこない」が、半数以上を占めた。

 さらにうつ傾向のある人は、3割以上が6個以上の不調を抱えているのに対し、うつ傾向のない人は0・5割にも届かなかった。

 調査結果の解析を行った藤田保健衛生大学医学部精神神経科学講座・内藤宏教授が言う。

「身近な内科医(かかりつけ医)を受診した率を調べると、身体的精神的不調を抱えながらも診断を受けていない人が多く、9割以上が未受診。自身の不調を相談している人も少数でした」

■「疲れ」「不眠」が重要キーワード

 相談していない人では、「大した病気ではない、恥ずかしい、病気と認めたくない」「不調改善の効果も期待していないので、相談したくない」という声が見られた。

 これらの結果から分かるのは、本人にとっては「大したことがない不調」「医師に相談しても良い回答が返ってこないと思える不調」が、実はうつ病のサインかもしれないということだ。

 厄介なのは、本人の自覚のなさに加え、医療機関を受診してもうつ病が疑われないこと。

「重症でなければ精神科を受診せず、大半は内科を受診します。医師もうつとは思わず、自律神経失調症や不定愁訴症候群といった診断名がつけられがちです」

 こう指摘するのは、内科医のための精神医学のワークショップを10年前から行う宮崎医院(愛知県)の宮崎仁院長。内科医である宮崎院長の外来患者のうち、3~4割が適切な診察や検査を行っても原因が見いだせないという。そして、彼らの中にうつ病が隠れている場合が大いにある。

「うつ病の早期発見、早期治療は重要です。治療までに要する期間が短ければ、『治療期間の短縮』『再発回数が少ない』『自殺念慮消失率が高い』ことにつながります」(内藤教授)

 本人に自覚がない以上、周囲の“声かけ”が重要になる。家族や同僚の様子から前出の身体症状が続いているようなら、医師への受診を勧める。内科医に診てもらうのであれば、精神科診療のテクニックを身に付けている医師がベター。宮崎院長は「産業医をやっている医師は、内科医でも比較的うつ病に詳しいように思います」と話す。

 もちろん、メディカルクリニックや心療内科などならなおいい。

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