がんと向き合い生きていく

治療薬急激進歩も ほくろのがんは暴れ出すと手に負えない

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 Bさんを担当させていただく以前の患者さんでも、転移のある悪性黒色腫は、出来たところは1センチほどの小さながんなのに、しばらくおとなしくしていても「いざ、暴れ出すと手に負えなくなる」という印象がありました。手術後の再発予防のため、インターフェロンも使用されてきましたが、抗がん剤が最も効きにくいがんのひとつです。

 しかし、最近はがんの遺伝子検査も出来るようになって分子標的薬が使われるようになり、治療薬は急激に進歩しています。BRAF遺伝子陽性例での「ベムラフェニブ」が認可され、抗PD―1抗体の「ニボルマブ」、抗CTLA抗体の「イピリムマブ」など、免疫療法として続々と使用可能になり、悪性黒色腫の薬物療法は大きく変わりました。今後も大いに期待されています。放射線治療においても悪性黒色腫は効きにくいがんとされていますが、粒子線治療が効くと注目されています。近年、脳に転移した場合は、ガンマナイフが使用されています。

 まれながんなうえ、転移のない場合は全体の切除によって多くは治癒しますが、転移があって暴れ出した時は最も急激に進行するがんのひとつです。いずれにしても、早期発見が大切ですので、心配な時は早い段階で皮膚科を受診されることを勧めます。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。