病院は本日も大騒ぎ

高齢者看護に罪悪感はつきもの「身体拘束も仕方ないと」

 関東圏にあるクリニックに勤務している看護師のキョウコです。

 私は以前、どんな患者さんも受け入れると評判の良心的な病院に勤めていたことがあります。代々お医者さんの一家が経営している民間病院で、地域密着がウリでした。

 勤めてみると、「どんな患者さんも受け入れる」ということがいかに大変かがわかりました。患者さんの中には、認知症の方もいらっしゃいます。手術をした当日に点滴などを勝手に外して夜の病棟を徘徊する患者さんも実際にいるのです。

 病院によっては、それを避けるために睡眠薬や安定剤を使って“おとなしくしてもらう”こともあるでしょうが、良心的な病院ですからそれはやっていません。もちろん、ベッドから落ちたり、徘徊しないようにベルトで体を拘束することもありませんでした。

 ただひたすら、夜勤の看護師が危険のないように患者さんを見張り続けるのです。私はすぐにその病院を辞めましたが、あのまま残っていたら、心身とも疲れ切ってボロボロになっていただろうと思います。

 今はクリニックに勤務していて夜勤からは解放されていますが、総合病院に勤めている友人の看護師に聞くと、認知症の高齢者には呼吸抑制ができない程度に睡眠薬や安定剤を使い、ベッドや車椅子からずり落ちないようにベルトで身体拘束したり、ベッドの周りを柵で囲むことがあるといいます。

 どうやら「徘徊する高齢者の患者さんは一律身体拘束」になっているようでした。

 身体拘束は看護師であればよく耳にする話ですが、私がけげんな顔をしていると、友人看護師はこんな“言い訳”をしていました。

「私だって最初は嫌だったのよ。でも、もし徘徊中に転倒して骨折したり、点滴を勝手に外したりしたら、命の危険があるじゃない。今では仕事だから仕方がないと思っている。それに、私は他の看護師に比べて緩めに縛るようにしているし……。言い訳だとはわかっている。でも、この罪悪感を自分の中で消化するのもお給料のうち。現実を考えれば身体拘束は仕方がないわ」

 患者さんが私の母親だったらと思うと……。クリニックに勤務してよかったと思っています。