ドキュメント「国民病」

【続・変形性膝関節症】医師の「人生10年儲かる」で手術決断

手術前と(左)と手術後
手術前と(左)と手術後(提供写真)

「私は65歳ですが、この春、身長が5センチ以上も伸びました」

 こう語るのは東京都清瀬市に住む専業主婦の高橋咲子さん(仮名)。驚くべき話だが事実だ。

 50歳を過ぎた頃から「変形性膝関節症」に苦しんできた高橋さんは今年1月初め、「東京慈恵会医科大学付属病院」(本院=新橋)整形外科・斎藤充准教授の執刀で、人工関節置換の手術を受けた。

 過去15年間、両膝の痛みにより、散歩や買い物も杖に頼り、連続して歩くのは100メートルがやっと。好きだった旅行も諦めてしまっていた。

 それでも、洗濯、掃除、料理などの家事から逃げるわけにはいかない。痛みに耐えている間に骨が変形し、両足がO脚になっていた。

 見かねた家族から何度も「手術を受けたらどう?」とアドバイスされたが、そのたびに「怖いから」と断ってきた。しかし、娘から「そろそろ車椅子を使用したらどう?」と声をかけられ、ようやく決心した。

■身長が5センチ以上伸びた

「膝関節の手術は怖いというイメージがありましたが、それ以上に歩けなくなって周囲に迷惑をかけるのが嫌でした。知人の勧めで、せめて病院の診察だけでも受けてみようと思いました」

 MRIなど精密検査を受けた後、担当医師である斎藤准教授の一言に、手術への背中を押される。

「高橋さん、手術をすると、人生、10年は儲かりますよ。安心して私に任せてください」

 両膝同時の手術で、要した時間は約4時間。術後、24時間集中治療室に入り、その翌日には一般病棟に移され、ベッドに寝たまま器械で膝を伸び縮めさせるリハビリがスタートした。

 2月初めに退院するまでの約1カ月、歩行運動などの厳しいリハビリが続いた。退院間際、看護師が身長を測定してくれた。入院前は155センチだったが、「身長が学生時代の160センチに戻っていました」。

 足の長さが元に戻っていたのだ。高橋さんのほほに涙が伝わった。