医者も知らない医学の新常識

認知症予防に運動は有効か 海外医学誌に検証データ掲載

 認知症を予防するにはどうすればいいのでしょうか。さまざまな予防法の中で、科学的にも認められているのが「運動」の認知症予防効果です。しかし、実は運動がどのくらい認知症を予防するのか、という点については、これまでそれほど確定的な研究データはありませんでした。

 今年の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」という医学誌に、「運動習慣」と「認知症」との関係を検証した最も大規模な研究データが発表されました。1万人以上の35歳から55歳の人を登録し、27年間観察したという非常に大規模なものです。それによると、運動をする習慣と認知症の診断との間には、観察期間10年から27年の間では、明確な関連は認められませんでした。一方で認知症と診断される9年前から、その人の運動量は明らかに少なくなっていました。

 要するに、認知症と診断される10年くらい前から実際にはその兆候は見られていて、その症状のひとつとして「やる気の低下」が起こるので、運動の習慣も少なくなるのです。そのために見かけ上は運動が認知症を予防するように見えるのですが、「実際には運動自体が認知症を予防しているわけではない」という結果です。

 もちろん運動は生活習慣病の予防には有効ですから、健康を維持するには必要な習慣です。しかし、認知症に限ってみると、その効果は確実ではないようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。