受診までの「応急処置」

【骨折】段ボールや雑誌を添え木にして包帯で固定

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 外傷で骨折する部位は「上肢」「下肢」「肋骨」「股関節」など幅広い。埼玉協同病院・整形外科(川口市)の仁平高太郎医師は「年代によっても骨折の多い部位は異なる」と言う。

「上肢の場合、子供は肘の周り、大人は鎖骨、高齢者では手首と肩の骨折が多くなる。下肢や肋骨の骨折はどの世代でも見られますが、股関節(大腿骨の頚部骨折)は骨密度が低下する60歳以降の女性に圧倒的に多い。トイレで立とうとして、ちょっとひねっただけでも折れる人がいます」

 骨折かどうかは、レントゲン検査をしないと分からない。「痛み」「腫れ」があり、骨折が疑われたら、とにかく患部を動かさないことが一番。骨がずれてしまうと、それだけ治りが遅くなる。

「上肢や下肢の場合、段ボールや雑誌など、何でもいいから添え木になるものを当てて包帯で固定し、極力動かさないようにして整形外科を受診してください。肩の骨折の場合、三角巾で腕を吊るのがいいでしょう」

 すぐに受診できる状況でなければ、外傷の応急処置の基本「RICE処置」をする。患部の「安静」「冷却」「柔らかい素材を当て、軽く圧迫して包帯で固定」「患部を心臓より高く上げる」だ。そして、痛み止めには市販の消炎鎮痛薬の内服。湿布なら消炎鎮痛成分の入っているものを貼る。

「肋骨の骨折は、基本的には自然に治る、心配の少ない骨折ですが、3本以上折れていると肺に刺さる危険性があります。肺に穴があく『気胸』を起こすと外科治療が必要なので、早く受診して見極めてもらうことが大切です。『呼吸』『せき』『笑う』だけでも痛むので、家庭に胸部バンドやサラシがあれば、胸に巻くと痛みが少しは軽減します」

 骨折の治りが早いか遅いかは、骨がずれていないかと骨折の部位によっても違うという。血流の悪い部位は、骨がつくまで時間がかかる。大腿骨の頚部骨折は、ヒビでもクギで固定したり、人工骨頭に置き換えたりする手術が必要になることが少なくないという。

「股関節の場合、歩けても骨折していることがあります。ですから、太ももの付け根に痛みがあれば無理して歩かないでください。受診するときも、タクシーなどの交通手段を使って、できるだけ股関節を動かさないことが重要です」

 やってはいけないのは、整形外科で診断がつく前に接骨院や整骨院へ行ってしまうこと。骨折しているのに触られてしまうと骨がずれてしまう。急性の外傷は必ず整形外科を受診しよう。