独白 愉快な“病人”たち

卵巣と子宮を摘出…やなせななさん手術決意に医師の信念

シンガー・ソングライターのやなせななさん(C)日刊ゲンダイ

 でも、主治医から「子供は諦めなさい。あなたが生きていくことが一番大事なんですから」と諭されました。その先生は昔、20代の患者さんの懇願を聞き入れて卵巣を片方残したことで、がんが再発して死なせてしまったそうなんです。「何と言われても私は切る。そこは譲れない」という先生の強い信念が胸に響き、納得して手術を受けました。

 手術の前夜、高層階の病室から街の明かりを見ながら、「子宮と卵巣がなくなるってどうなんだろう……」とずっとずっと考えて、「こんな種類の悲しみはこれまで考えたことないな」としみじみ落ち込みました。どうしようもなく泣けてきたので「いかんいかん、早く寝ないと」と思って看護師さんが準備してくれていた睡眠導入剤を飲んでやっと眠りに就きました。

 子宮と卵巣を取ってしまったことを話せるようになったのは、手術から2年後ぐらいです。それまでは、友達にも言えませんでした。女性ホルモンが欠乏していることを悟られないように、コラーゲンや高級化粧品を買いまくった時期もありました(笑い)。でも、講演会で病気の話をするようになると、「私もそうです」という人たちがいっぱいいて、「みんなしんどいねんな」と気づきました。そして、彼女たちに優しくされて「こんなに明るくなれるんだ」と癒やされたのです。

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