当事者たちが明かす「医療のウラ側」

生存率の信憑性は? 本当に早期発見すればがんは治るのか

都内の30代看護婦

 フリーアナウンサーの小林麻央さんが亡くなり、乳がんに関する記事やニュースをたくさん目にしました。ちょっと気になったのは「乳がんのⅠ期の5年生存率はほぼ100%、Ⅱ期でも95%以上。早期発見していれば……」といった論調の記事です。

 データそのものに間違いはないのでしょう。しかし、それは乳がん患者さん全体についてのものであり、小林さんがかかった35歳未満の若年性乳がんとは違うのではないか、と思うのですがどうでしょうか。

 そもそも若年性乳がんは、乳がん全体の2%程度に過ぎず、5年生存率は比較的低いことが知られています。若年性乳がんは他の年代での乳がんと比べて発見時のがんのサイズが大きい、早期がんが少なく、悪性度が高いからです。そのため、若年性乳がんの経過は、そうでない年代の乳がんに比べて当然悪くなります。

 実際、若年性乳がんだけに特化した生存率データは多くなく、米国の国立がん研究所の統計資料(2000~05年)によると、20~35歳の5年生存率は70%台だそうです。

 運よく早期に見つかっても、若年性乳がんのⅠ・Ⅱ期は他の世代のそれより悪いそうです。

 しかも、若年性乳がんの5年生存率は、5年を経過した以降も生存率が下がりやすいがんであるため、最近は「10年生存率」が重視されています。乳がんは誤診もあり、疑いがあっても治療をためらうのは当然です。にもかかわらず、何人かの医師が小林さんのケースでは「早期発見していれば……」と言わんばかりの発言をしているのに、何か違和感を覚えるのです。

 もちろん、乳がん検診は大切ですし、小林さんが早期発見していれば違った結末が待っていたかもしれません。しかし、逆に早期発見されても亡くなる人もいるのです。“早期発見すれば治る”という図式を語れるほど、がん治療は進んでいるとは思えないのですが、いかがでしょうか?