もちろん、手術はできないと判断するケースもあります。たとえば、来院されるまでの間に認知症が進んでしまって、会ってお話をしても理解力や判断力が障害されている高齢の患者さんはどうしても難しいといえます。また後期高齢者で、手術を終えてから回復するまでの時間と予想される健康寿命の長さを考慮して、手術をしないほうがQOL(生活の質)を維持しながら自然寿命をまっとうできると判断した場合も、手術は選択しません。
ただ、そうした特別なケースでなければ、ほとんどの患者さんを受け入れます。これまで、ずっとそうした姿勢で臨んできました。
先にもお話ししたように、再手術、合併症を抱えている、高齢で全身状態が悪い患者さんは、手術の難易度が上がります。
たとえば再手術の場合なら、前回の手術による癒着がひどく、臓器や血管が複雑にくっついてしまっているためスムーズに患部にメスを入れることができないケースも少なくありません。丁寧に癒着の剥離を何度も繰り返し、臓器損傷と不測の出血を起こさないような処理をしながら進めなければならないのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」