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【痔】「入院手術」で術後最初の排便と入浴の不安を払拭

寺田病院・大腸校門病センターの寺田俊明理事長
寺田病院・大腸校門病センターの寺田俊明理事長(提供写真)
寺田病院・大腸肛門病センター(東京都足立区)

 同院は、痔、ソケイヘルニア(脱腸)、下肢静脈瘤などの短期入院手術専門施設。その手術の多くを手がける大腸肛門病センターは、「肛門科」「外科」「内視鏡科(胃腸科)」で構成される。中でも、肛門科が行う痔の年間手術件数は全国でもトップクラス。

 痔の種類別では、痔核(いぼ痔)約55%、痔瘻約40%、裂肛(切れ痔)5~10%といった割合だ。

 痔の治療では「日帰り手術」をウリにする施設も少なくないが、逆に同センターが基本とするのは「入院手術」。そのため、他の持病がある人や高齢者らでも対応でき、どんな病態の痔の手術でも断らないのがポリシーだという。

 同院の寺田俊明理事長が言う。

「痔の治療は、『根治させたいのか』それとも『悩んでいる症状だけ治したいのか』など、患者さんの希望によって内容が違うオーダーメード治療が行われます。ですから、当院でも日帰り手術が可能な症例で、患者さんが日帰り手術を望むのであれば都内3カ所(巣鴨、赤羽、浅草)にある分院(クリニック)で対応しています」

 同センターが入院手術を基本とするのは、専門性の高い手厚い治療を診療方針とするからだ。術後、最も大切になるのは排便コントロール。排便がスムーズにできないと、手術した患部が細菌感染して腫れてしまう場合もある。

「日帰り手術の場合、患者さんが家に帰って最も不安を感じるのは術後、最初の排便と入浴です。さらに術後の痛みも加わります。入院手術では、その最も不安が高い排便やお尻の洗い方などを入院中に指導することができます。痔の治療では術後の管理、心のケアも大切なのです」

 入院日数は手術内容で異なる。痔核の場合、痔核を切除する「結紮切除術」が1カ所であれば術後3日後に退院、2カ所以上であれば術後6日後に退院となる。術後の痛みが引くのもこれくらいかかるという。

■40歳以上は術前に大腸内視鏡検査

「肛門からの出血は痔だけとは限りません。当センターでは、40歳以上で便秘を伴ったり、若い人でも下痢を伴うような場合には、大腸がんや潰瘍性大腸炎などの他の疾患を見逃さないように術前に必ず大腸内視鏡検査をします。検査をすると術後、最初の排便までに1日半くらいかかります」

 痔核は直腸と肛門のつなぎ目を境に「内痔核」と「外痔核」に分けられる。内痔核に対しては硬化剤を注射する「ALTA療法(ジオン注射)」もある。つまり、痔核の治療は「結紮切除術単独」「ALTA療法単独」「両方の併用」の3つの治療法がある。ALTA療法は日帰り治療の施設で多く行われているが、同センターではALTA療法単独でも1泊2日の入院になる。それは局所麻酔ではなく、腰椎麻酔で確実に治療するためだ。

「一般的には『入院治療は大変』と思われていますが、どんな治療をするにしてもトータル的に考えたら入院治療の方が確実で安心。治療後の満足度は高いと思います」

 同院のそれぞれの分院には、女性医師による「女性専用外来」も設けられているという。

■データ
1970年開院。医療法人社団俊和会の病院。
◆スタッフ数=常勤医師6人(日本大腸肛門病学会指導医2人、専門医2人)
◆年間初診患者数(2016年)=約4000人
◆痔の年間手術件数(同)=約900件