がんと向き合い生きていく

胃がんに「抗がん剤は効かない」は大きな勘違い

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 主婦のKさん(56歳)は、胃がんのステージⅢで胃全摘の手術を受けました。しかし、その1年後のCT検査で腹腔内のリンパ節腫大を多数認め、再発と診断され紹介されてきました。

 最初は入院、その後は外来で抗がん剤治療を繰り返し、リンパ節の転移は完全に消失。その後、再燃なく5年を過ぎました。あるテレビ局で胃がんの特集番組が企画された際、Kさんは胃がんの患者さんを励ますために快く出演してくださいました。それくらいお元気になられたのです。

■奏功している患者はたくさんいる

 会社員のCさん(50歳・男性)は、2カ月前から少ない食事でもすぐにお腹がいっぱいになったように感じていました。病院での内視鏡検査でスキルスタイプの胃がんと診断されました。CT検査では腹水は認めませんでしたが、お腹に穴を開けて腹腔鏡を行ったところ、腹膜に白い小さい斑点を多数認め、がんの腹膜播種と診断され、胃の手術は行わず抗がん剤治療となりました。注射と内服の治療を開始して3カ月後には食事量が増し、体重も次第に戻って2年経過しています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。