完治可能な病気だからこそ C型肝炎ウイルス検査のススメ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 C型慢性肝炎は、副作用の少ない飲み薬で「完治」が可能な時代になった。しかし、その恩恵を受けられていない人がかなりいる。患者会の一つ「東京肝臓友の会」の米澤敦子事務局長に聞いた。

「友の会」では火曜日から金曜日の10~16時、電話相談を受け付けている。米澤さんたちスタッフが痛感しているのは、「C型慢性肝炎に気付いていない人がまだまだいる」ということだ。

 C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスに感染し発症。10~30年かけて慢性肝炎↓肝硬変↓肝がんと進行する。

「『肝がんが見つかるまで気付かなかった』という相談は珍しくありません。自覚症状がなく、本人の認識では元気満々。だから、まさかC型肝炎とは疑わないのです」

 C型肝炎ウイルスの感染は2段階の血液検査で診断される。この検査は通常、健診や人間ドックに組み込まれていない。自ら進んで受けなければならないが、そうならないのは、「自分とは無縁の病気」という気持ちがあるからだろう。

■「1回受ければOK」

 米澤氏が強く訴えるのは「40歳以上であれば、だれにでも感染リスクがある」ということ。輸血のスクリーニングは1989年以前はなかった。病院では注射器が連続使用されていた。つまり、C型肝炎ウイルスの感染を防ぐための今の体制が徹底されるようになったのは、近年のことなのだ。

 米澤氏もかつてC型慢性肝炎患者だったが(今は完治)、告知された時に思い当たる原因はなかった。検査を受けなければ「C型慢性肝炎ではない」とは言い切れない。

「1回でいい。検査を受けてください。どこの病院でも受けられます」

 米澤氏は、すでにC型慢性肝炎と診断されている人にも注意喚起を促す。C型慢性肝炎は長い時間をかけて進行するが、自覚症状がない。不調を感じるようになるのは、肝がんを発症した時か、肝硬変の中でも重症な段階(非代償性肝硬変)に至った時かだ。

「ずっと専門医にかかっていないのに『軽症ですから』と話す人が結構います。それは、自覚症状がないだけです」

 C型慢性肝炎の治療は急速に進歩している。体のウイルス防御機能を活性化させるインターフェロンを定期的に注射する「インターフェロン治療」が開始されたのが92年。2011年には、飲み薬で増殖を抑制できる「直接作用型抗ウイルス薬(DAA)」が登場し、インターフェロンとの併用治療がスタート。そして14年、DAAのみの治療「インターフェロンフリー治療」が始まった。

「インターフェロン治療は副作用が強いですが、DAAは副作用がほぼなく、成功率100%に近い薬もあります。何度インターフェロン治療をやってもダメだった人が、DAAで完治したケースは多い」

 ところがDAAは、肝硬変が重症段階(非代償性肝硬変)になると使えない。C型慢性肝炎と知りながら放置していた人は、せっかくのチャンスを逃すことになる。

 悲惨なのは、医師にかかっているのに「医師がDAAを知らない」「知っているが患者に勧めない」ためにDAAにたどり着けないケースだ。 

「インターフェロン治療登場以前に行われていた、単に肝臓の炎症を抑えるだけの治療が漫然と行われている。医師に知識がないのか、治療費が稼げるからと患者を“囲い込み”しているのか。いずれにしろ、患者は治療の機会を奪われる。それを避けるためには、専門医を受診すべきです」

 米澤氏らの話を聞き、90代でDAAの治療を受け、完治した人がいる。「肝がんの恐怖から逃れられ本当にうれしい」と、みな笑顔を見せるという。

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