当事者たちが明かす「医療のウラ側」

なぜ汗をかく前に水分補給しなければならないのか?

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 玉のような汗が出てきて、初めて汗をかいたと思う人がいます。これは間違いです。汗は上昇した体温を適温に下げる働きがあります。その原理は水の気化熱にあります。通常、水1ミリリットルが蒸発すると、その周りから約583カロリーの熱を奪うことが知られています。

 仮に体重60キロの人が90分間のウオーキングで250キロカロリー消費したとしましょう。この場合、理論上では約5度体温が上昇します。体重60キロの人は体表面から約85ミリリットルの汗が蒸発すると体温が1度下がるので、430ミリリットル近い汗を出せば体温の上昇を防ぐことになります。

■流れる汗は体温を下げない

 汗が冷却作用を発揮するには、水分が蒸発しなければなりません。ただ、実は“冷却作用のある汗”というのは目に見えません。汗が出るとともに気化してしまうからです。私たちが汗として認識しているのは、皮膚で蒸発できずに残った汗が汗滴として残ったものをいい、汗の排出量が最大蒸発量を超えた場合に出てくるのです。

 つまり、玉のような汗が流れている、汗が目に見えている状態では、汗は冷却作用を失っているのです。それどころか、気温が上がっている中で玉のような汗が流れ出ているのは、体の中から水分がどんどんとムダに流れ出ている状態なのです。

 とくに中高年は、目に見える汗は無効発汗であり、目に見えずに蒸発した有効発汗量と合わせた量が汗の総量ということを認識しておかなければなりません。夏は汗をかいてから水分を補給するのでは遅い、という理由はまさにここにあるのです。