がんと向き合い生きていく

いまの「ホスピス」は入院が長くなると退院を勧められる

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 独身で独居生活のPさん(58歳・男性)は食道がんが進行し、Zがん専門病院の外来で抗がん剤治療を受けていました。

 担当医からは「いまの治療が効かなくなったら、もう方法はありません。その時は3カ月の命だと思ってください。ホスピスを希望されるのであれば、今のうちに探した方がいいでしょう。紹介状は書きます」と告げられました。Pさんはめっきり食事量が少なくなり、だんだん体力が衰えてきていました。最期の3カ月をひとりで暮らすのは無理と考え、ホスピスを探してみることにしたのです。

■かつては治療も行われていた

 まずA病院のホームページで緩和病棟について調べてみたところ、入院の条件の中に「症状が軽減した場合には、退院または転院となる旨に同意していること」とありました。また、「多くの患者さんに緩和ケア病棟を利用していただくために、それぞれの患者さんの入院期間は平均16日程度と短くなっています」と記載されていました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。