がんと向き合い生きていく

いまの「ホスピス」は入院が長くなると退院を勧められる

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 次にDホスピスに電話してみると、施設の職員から「がん患者の苦痛を緩和する施設です。入院が3カ月以上になりますと、退院か転院していただきます。入院中に亡くなる方のみとりはいたしますが、本来はみとりをする施設ではありません」と言われました。

 ホスピスは最期をみとってくれるところではなかったのか? 在宅となると、訪問看護や往診の医師が来てくれても、ずっと誰かが居てくれるわけではない。今は、痛みもなく苦しくもないが、だんだん動けなくなってきた時、ひとりでどうすればいいのだろう……Pさんは不安になりました。

 そこで、通院中のZ病院の相談室を訪ねました。すると、「最近は、入院に対する考え方が変わったホスピスもあるようです。入院期間が1カ月以上になると診療報酬が下がり、病院の収益が減ってしまうのです。在宅では難しいですか? いつでも連絡できるコールを付けることや、24時間ヘルパーもありますよ」とのことでした。そして、「最期をみてくれる病院や有床診療所はいかがですか?」とアドバイスを受けました。

3 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。