受診までの「応急処置」

【溺れた】意識のない人に無理に水を吐かせてはいけない

(C)日刊ゲンダイ

 川や海など水辺でのレジャーでは、水の事故が起きかねない。もし、溺れている人を見かけたら、周りの人に協力を求め、すぐに119番通報をする。救助に慣れていない人が泳いで助けに行くのは危険だ。可能であれば、ベルトやタオル、棒などをつかませて引き上げるようにしよう。

 では、引き上げた後、どのような応急処置をするべきなのか。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「意識があり、呼吸が正常であればひとまず安心です。乾いたタオルで体を拭き、毛布などで冷えた体を保温して救急車の到着を待ちます。意識がない、異常な呼吸や呼吸が止まっている場合には、ただちに心肺蘇生法を行ってください」

 意識のない人に無理に水を吐かせてはいけない。吐いたものが気道を逆流すると、気道閉塞を起こす危険性があるからだ。心肺蘇生法は硬くて平らな場所であおむけに寝かせ、「心臓マッサージ(胸骨圧迫)30回」と「人工呼吸2回」を交互に繰り返す。

「心臓マッサージをする場所は『胸の真ん中』です。乳首と乳首を結ぶ線の真ん中を目安にします。そこへ片方の手のひらの付け根を当て、その上からもう片方の手のひらを重ねます。そして、肘を真っすぐ伸ばして体重をかけ、胸が5センチ程度沈む強さで押します。速さは1分間当たり100~120回のテンポで、30回絶え間なく続けます」

 次は人工呼吸。まずは気道を確保するために、片手で溺れた人の額を押さえながら、もう片方の手の指先を顎の先端に当てて持ち上げる。この状態で1回1秒かけて息を吹き込む。2回やったら、再び心臓マッサージに戻るようにする。

「心肺蘇生法をやっている最中に水を吐く場合もあります。そうしたら、すぐに顔を横に向けて口を開かせて、吐いたものを指でかき出して、拭いてから継続してください」

 心肺蘇生法を1人でずっと続けるのは、かなり大変(疲れる)。できたら、5サイクルごとに周囲の他の人と交代しながら続けた方がいいという。

 また、途中で意識が戻ったり、心肺蘇生法が必要でない場合でも、溺れたら必ず医療機関を受診することが大切。水が気道に入り込んでいると、後に誤嚥(ごえん)性肺炎を起こす場合があるからだ。

「泳いでいて、足がつると溺れる原因になります。足がつるのは『冷え』や『脱水』による電解質のバランスが悪いことで起こります。一度、足がつったら水泳は中止した方がいいでしょう」