動脈硬化に勝つ

狭窄率だけでは危険を測れない 大半が前触れなしに発症

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 血管は、外側から順に「外膜」「中膜」「内膜」の3つの層でできている。

 外膜には、血管の外から細い血管を通じて栄養分が運ばれる。中膜には血管の弾力性を保つ平滑筋細胞などの層がある。 そして、血液と接している薄い層が内膜で、その表面は一層の「内皮細胞」でできている。内皮細胞は、血液が固まって血栓ができることを防ぎ、血管を広げたり縮めたりする「ホルモン」を出して、血流をコントロールしている。最も重要なのが、内膜と内皮細胞だ。

 病気と関係する動脈硬化には、比較的太めの動脈に起こる「粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)」と、高血圧が長引いて脳や腎臓の細い動脈の中膜が硬くもろくなり、細くなったり破れやすくなる「細動脈硬化」がある。

 粥状動脈硬化は、高血圧や糖尿病、喫煙、運動不足、脂質異常症などが原因で血管に負担がかかり、内皮細胞が傷つくことで始まる。

 すると、血液中の悪玉コレステロール(LDL―C)が酸化ストレスにより酸化LDL―Cに変化し、障害された血管内皮の下に入り込む。その酸化LDL―Cなどの異物を処理するために白血球の一種であるマクロファージが内膜に入り、これらを貪食して死ぬと、泡沫細胞となって脂質などと共に蓄積して内膜の下にコブのようにたまる。この状態をプラーク(粥状動脈硬化)と呼び、血流が減少したり、プラークの皮膜が破れて血栓ができ、完全閉塞を起こして心筋梗塞や心筋梗塞が起こる。

 何らかの前触れを知るのは困難だ。

「心筋梗塞、心臓突然死を起こした人の大半が、何の前触れもなくです」

 プラークが大きくなると、それだけ血管は狭くなる。一方、心臓の動脈は、狭窄率が50%でも症状はない。75%以上の狭窄で、ようやく「胸が痛い」「圧迫される」という症状が出てくる。

「発症前の血管狭窄率を見ると、70%以上が2割。一番多いのは狭窄率50%未満で、6割以上が該当しました」

 狭窄率と治療の緊急性は必ずしもイコールではない。加えて、症状の有無と発症の危険度もイコールではない。「自分は大丈夫」と思っている人も、それは何の保証もないのだ。

伊東春樹

伊東春樹

日本循環器学会専門医、日本心臓病学会(上級臨床医、FJCC)。「けやき坂医科歯科クリニック」非常勤。