「筋肉増強剤が体にいいって聞いたんです。どこで手に入るのですか?」――。最近、年配の女性の患者さんから立て続けにこんな相談を受けました。“筋肉増強剤? 何を言っているんだろう?”と思っていたら、患者さん方が口をそろえて「テレビで見たんです」というのです。どうやら、ある健康番組で筋肉増強栄養素である「ロイシン」が紹介され、それを「筋肉増強剤」と勘違いされたようです。
確かに、日々筋肉が衰えていく高齢者にとって筋肉を維持することは大切です。転倒による寝たきりや膝や腰の痛みの防止だけでなく、筋肉が分泌するホルモンによって「がん」「糖尿病」「アルツハイマー」などの病気を予防するからです。
そもそも筋肉は運動や肉などのタンパク質、アミノ酸などの栄養成分を摂取したときの刺激で増加します。ですから高齢者は毎日の運動と肉などの良質のタンパク質の摂取が大切です。
肉は分解されるとアミノ酸になります。アミノ酸はその種類によって筋肉の合成力が違います。
アミノ酸は、体内で合成できずに食事など外部から摂取しなければならない「必須アミノ酸」と体内で合成できる「非必須アミノ酸」の2種類があります。
筋肉合成には必須アミノ酸が必要で、とくに重要なのはロイシンと呼ばれる必須アミノ酸です。体に筋肉を合成するようにシグナルを送るからです。むろん、このシグナルがあっても筋肉の材料となる必須アミノ酸がなければ筋肉は効率よくつきません。そのため筋肉をつけたければロイシンを含む必須アミノ酸が多く含まれる食事を取ることが重要なのです。
必須アミノ酸は主に肉、魚、卵、牛乳、豆類に多く含まれます。これらを積極的に取るか、サプリメントで補うのがよいでしょう。
当事者たちが明かす「医療のウラ側」
筋肉増強栄養素ってなに? がん、糖尿病などの予防効果も
都内の50代開業医