役に立つオモシロ医学論文

仕事のストレスで「うつ病」発症リスクが1.7倍に

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 うつ病の発症要因に「職場のストレス」が挙げられます。体調に大きな変化はなくとも、職場で感じるストレスはあまり良いものではありません。

 このような職業性ストレスが精神状態に与える影響を検討するために、さまざまな方法論が提唱されています。

 その中でも、多くの研究に採用されている手法は「仕事の要求度・コントロールモデル」と呼ばれるものです。

「仕事の要求度」とは、量的負担、役割ストレスなど、作業に関わるストレスのことです。「仕事のコントロール」とは、裁量権や自由度のことと考えていいでしょう。仕事の要求度が高いにもかかわらず十分な裁量権や自由度が与えられていない状態を「高ストレイン」と呼び、こうした状況では心身のストレス反応リスクが高いといわれています。ただ、こうした状況がうつ病の発症と関連するかどうか、明確なことは分かっていませんでした。

 そんな中、「高ストレインとうつ病発症リスク」の関連を検討した論文が、精神医学・心理学の国際誌2017年6月号に掲載されました。

 この研究では、すでに公表されている6つの研究に参加した2万7461人のデータを統合解析しています。その結果、「高ストレイン状態では、うつ病の発症が1.77倍多い」という結果が示されました。

 さらに未公表の研究データの解析も行ったところ、同様にうつ病発症が1.27倍多いという結果が示されました。

 ストレスの感じ方は人それぞれですが、職場の環境が精神状態に与える影響は軽視できないものがあります。ストレスをひとりで耐えるのではなく、無理を無理であるとしっかり判断する。まずは、そうしたことが大切かもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。