Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

マンモの見落とし率は15% エコーが本当に必要な女性は

小林麻央さんは享年34歳という早世(C)日刊ゲンダイ

 ただし、対象年齢は40歳以上で2年に1回。麻央さんのような30代、20代の若い女性は、対象から外れています。40歳未満で乳がんを発症するのは7%ほど。40代から年齢が上がるにつれて増えるのです。対象年齢が40歳で区切られているのは乳がんを発症しやすい年齢的な要素が一つと、もう一つは乳房の性質があります。

 若い人は乳腺が豊富で密度が高い傾向で、それが「デンスブレスト」。そのタイプは、マンモでがんを判別しにくいのです。乳腺が不均一のタイプもマンモだと異常を見つけにくい。10~15%の乳がんが、マンモで見落としのリスクがあるといわれているのは、そのためです。

 そんなデンスブレストの発見に役立つのが、エコー検査。超音波なので被曝もありません。

「それなら、若い人にはエコーを」と思うかもしれませんが、エコーは技術者による検査精度のバラつきがあり全国レベルで実施しても死亡率が下がるというデータが得られていません。エコー検診が全面的に推奨されない理由はそこです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。