数字が語る医療の真実

かっけの撲滅に奮闘した医師 麦飯採用で陸軍が「変身」

 海軍軍医の高木兼寛が海軍でかっけの撲滅に奮闘していたころ、陸軍でもかっけと闘う医師がいました。大阪陸軍病院院長の堀内利国です。彼は当初、かっけを伝染病と考え、患者の隔離により撲滅しようとします。しかし、効果はなかなか表れません。そんな中、部下の医師である重地正己から、「自分のかっけを麦飯によって治した」という話を聞きます。さらに重地は、監獄でのかっけが、米飯を麦飯に替えたところ激減したという事実も知っていました。

 堀内はさっそく神戸監獄に重地を派遣し、かっけの発生状況を調べました。すると、米飯を出していた明治15年には70人、16年には17人の患者が発生していますが、麦飯に替えた17年には1人も患者が発生していないというのです。さらに、大阪、三重、岡山でも同様の結果が得られます。

 これは単なる偶然ではありえない。伝染病説を信じていたにもかかわらず、堀内は麦飯を陸軍にも採用することを決定します。

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名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。