動脈硬化に勝つ

狭心症治療で長生きはできない 治療不要の声も

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
可能なのは症状軽減だけ

 狭心症の治療は、薬、カテーテル治療、バイパス手術の3通りがあるが、一般的には、カテーテル治療が最も多く行われている。しかし、伊東春樹医師は次のように指摘する。

「カテーテル治療は急性の心筋梗塞や不安定狭心症には非常に有効ですが、プラークが安定して破れにくい状態の安定狭心症には、症状がなくなる以外には効果がなく、生命予後(長生きできるかどうか)の改善には効果がないことが分かっています」

 しかし、慢性虚血性心疾患でステントを入れた患者の多くはそれを知らず、狭いところを広げると「治った」と思ってしまう。

 最近の英国での調査では、9割の人が「カテーテル治療を受けたので自分は長生きできるようになった」と誤解しており、症状の軽減が唯一の効果だと分かっていたのはわずか1%だった。

 日本でも、現在、慢性虚血性心疾患に行われているカテーテル治療の約3割は「行う必要はない、行うべきではない」といわれている。

 狭心症や心筋梗塞は、動脈硬化の進行で血管が狭窄して発症する。1カ所に狭窄が起こっていれば、血管のほかの部分にも程度は軽くても狭窄があると考えたほうが自然だ。実際、心筋梗塞を起こした人の血管を調べると、95%の人に、梗塞を起こした血管以外に平均で3~4カ所も不安定なプラークがあった。これらが2~3年で次の狭心症や心筋梗塞を起こすのだ。

 再狭窄の問題もある。バルーンで狭くなった血管を広げる場合、再狭窄率は30~40%。バルーンを使って網目状の金属であるステンレスを膨らませ、狭窄部分を広げるステント留置術は、20%前後の再狭窄率。

 これらを改善するために開発された免疫抑制剤がコーティングしてある薬剤溶出型ステントは、再狭窄を起こしにくくするので、再狭窄率は5%前後に著明に減った。しかし、残念ながら、再狭窄が減っても再発は防げず、死亡率は下がらなかった。

 伊東医師は「もぐら叩きのよう」と言うが、これは「治療が1回で済むのではなく、また、あちこちに狭窄があることを考えると、心筋梗塞を起こさないため、元気で長生きするためには血管を広げることでは不十分。もとを絶たなきゃ駄目」という意味なのだ。

 しかし、非常に効果の高い方法がある。これをプラスすることで、生命予後がかなり良くなるのだ。

伊東春樹

伊東春樹

日本循環器学会専門医、日本心臓病学会(上級臨床医、FJCC)。「けやき坂医科歯科クリニック」非常勤。