がんと向き合い生きていく

腫瘍マーカーはがんそのものの状態を表すわけではない

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 患者さんの中には、「採血だけでがんが分かるなら、腫瘍マーカーを測定してほしい」と希望される方もいらっしゃいます。X線検査や内視鏡などの検診よりも簡単でよいと考えがちですが、現在の多くの腫瘍マーカーは早期がんではなかなか陽性になりません。つまり、腫瘍マーカーで発見されるのは進行がんのことが多い(PSA=前立腺特異抗原は別で、早期前立腺がんでも高くなる)ので、腫瘍マーカーだけでは不十分といえます。

 また、マーカーが高いがんでは、手術してがんが取り切れた場合は正常値に戻り、再発した場合は再度高くなるということがあります。マーカーが、正常値以上に上がってくると再発を疑います。急に上昇した場合は、予定外にCTなどで画像診断を行うこともあります。

 そのため、がんの手術を受けた後、定期的に採血で腫瘍マーカーをチェックしている患者さんはたくさんおられます。正常値の範囲内での変動でも、患者さんによっては大変気にされます。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。