がんと向き合い生きていく

腫瘍マーカーはがんそのものの状態を表すわけではない

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 中には、再発はないのに正常値よりも少しだけ高い状態が続く方もいらっしゃいます。なぜそうなるのかは分からないのですが、患者さんも我々も心配しながら、定期的に経過を見ていきます。

 多くのがんでは、根治手術後5年経過してCT検査などでも再発がない場合、そして腫瘍マーカーの値の上昇がない場合は「治癒した」と判断します。腫瘍マーカーが高い値を示すがんでは、抗がん剤治療ではその効果の指標になります。治療が効いているのかどうかの目安に、腫瘍マーカーを月1回の採血でチェックしているのです。

 しかし、腫瘍マーカーの値が、がんの大きさをそのまま表すわけではありません。ですから、腫瘍マーカーが下がるのはいいのですが、どのくらい小さくなったか、消えたか、あるいは大きくなったかはCT画像などで判断します。腫瘍マーカーはあくまで指標であって、がんそのものの存在は、画像ではっきりさせるのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。