受診までの「応急処置」

【心筋梗塞】意識を失ったらすぐに心臓マッサージ

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 心筋梗塞の発症は冬に多いが、脱水で血液が濃くなる夏場も侮れない。心臓発作が起こりやすい時間帯は、「早朝の6~8時」と「夜間の20~22時」ごろ。

 かかりつけ医に相談できる時間でもないので、早急に救急車を呼ぶことが重要になる。

 心筋梗塞を疑う「胸の痛み」は狭心症でも起こるが、普通の狭心症は体を動かしている時に発症し、数分から15分くらいで治まるのが特徴。しかし、狭心症発作が頻回、起こるようになり、安静時でも起こるようなら「不安定狭心症」が疑われる。心筋梗塞と同様に救急車が必要。東邦大学医療センター・大橋病院の原英彦准教授が言う。

「不安定狭心症は、心筋梗塞の一歩手前と考えていい。発作を繰り返しているうちに、大きな発作がなくても心筋梗塞が出来上がってしまう場合があります。ですから、不安定狭心症と心筋梗塞は区別せずに『急性冠症候群』と呼びます」

 心筋梗塞の重苦しい強い胸の痛みは、ピンポイントで場所を表現することはできない。あえて言えば「胸の中央辺り」。中には「胃が痛い」と訴える人もいるという。肩や背中、あごや歯などが痛む関連痛もある。「冷や汗」や「吐き気」を伴うこともある。

「糖尿病の人は合併症の神経障害で胸痛が出ない場合があります。その時は『冷や汗』が重要なポイントになります。冷や汗は自律神経の症状で、重症な人ほど出やすい。心筋梗塞の疑いがかなり強くなります」

 これらの症状が30分以上続くようなら、すぐ救急車を呼ぶ。心筋梗塞で死亡する人の半数以上は発症から1時間以内に集中しているが、それは心室細動(危険な不整脈)が起こるからだ。この時に不整脈のため気を失う。

「腹痛だと思ってお風呂に入ってしまう人がいますが、絶対に入らないでください。脱水を起こして、さらに悪化させてしまう。心房細動を起こす危険性も高くなります」

 かかりつけ医からニトロ製剤(硝酸薬)を処方されていれば、飲んでもらいたいという。心筋梗塞には効果はないが、冠動脈が一過性にケイレンを起こして収縮する「れん縮性狭心症」の場合にはよく効く。

 では、救急車到着までに意識を失った場合、どうすればいいのか。

「心室細動が最も考えられるのであればAED(自動体外式除細動器)を使うのがいいが、なければ心臓マッサージを開始してください。人工呼吸はやらなくても生存率は変わりません。その際に、脳を守るために首を氷などで冷やしてもらうと、治療後の後遺症が出にくくなります」