Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

慈恵医大がん見落とし問題の教訓 検査結果は患者から確認

検査結果は患者自ら確認する姿勢が大切(C)日刊ゲンダイ

 なぜか。原因は、分業体制にあります。

 患者が不調を訴えて受診したり、検診で異常が見つかったりすると、より精密な検査が行われます。そういうとき、主に外科医から依頼を受けるのが、われわれ放射線診断医や病理医です。CT検査の画像や採取した組織から診断。リポートをまとめて、依頼元の医師に渡します。つまり、主治医と診断医が別。医療レベルを高めるための分業体制ですが、そこに大きな原因があります。

 その医師がリポートを受け取ってすぐチェックすればいいのですが、必ずしもそうではなく、多くは患者さんの来院時にリポートを“見る”のが普通。私は、検査を受けた患者さんに後日、電話するように伝えていますが、電話がないと、そのままになる可能性は否定できません。

 もちろん、見落としは病院側のミスですが、外来や病棟に数多くの患者を抱えている以上、このリスクは決してゼロではないのが現状です。そういう中では、患者さんも医師とチームを組んで、率先して医療に参加するのが望ましいでしょう。それが、見落としリスクを減らすことにもなるのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。