受診までの「応急処置」

【脳梗塞】仰向けに寝かせ頭は高くしない 病院へは救急車で

脳梗塞の際は救急車で病院へ
脳梗塞の際は救急車で病院へ(C)日刊ゲンダイ

 夏は脱水から脳梗塞を起こしやすい。特に寝ている間は脱水が進むので朝起きたときが要注意。急に半身の手足に力が入らなくなる「片麻痺(まひ)」や、ロレツが回らなくなる「構音障害」があれば、脳梗塞の疑いが強い。しかし、梗塞を起こしている部位によっては、典型症状と違う場合もある。東邦大学医療センター大橋病院・循環器内科の原英彦准教授が言う。

「小脳の梗塞では、『吐き気』『めまい』、後頭葉の梗塞では見ているものの半分が見えなくなる『視野障害』などが表れます。吐き気が強いと一見、食中毒と思ってしまう場合があるので注意してください」

 いずれにしてもこれらの症状で脳梗塞を疑ったら、すぐに救急車を呼ぶ。症状は突然表れることが多く、たいていは起こった時間がはっきりしている。その発症時間を確認し、119番通報をした際に伝えることも重要だ。発症から4時間半以内であれば、最も有効とされる「t―PA治療」(点滴で血栓を溶解)を行うことができる。

 では、救急車が到着するまでに、どのような対応をとればいいのか。

「基本的にはあおむけに寝かせて、頭を高くしないようにします。立ち上がったり、歩いたりすると、脳への血流が悪くなり、脳の障害がひどくなる恐れがあるからです。吐きそうなときは、おう吐物が気道に詰まらないように注意が必要です。その場合、体の右側を下にして横に寝かせます。こうすると胃の形から吐きにくくなります」

 片麻痺を起こしている側の腕は丁寧に支えて扱うこと。扱い方が悪いと、簡単に脱臼や骨折をしてしまうという。

 糖尿病で治療している人では、低血糖で意識が低下している症状が脳梗塞と区別がつきにくい場合がある。その際には、砂糖(ブドウ糖)をなめて改善するかを確認するのがいいという。

「脳梗塞の前ぶれの『一過性脳虚血発作』も見落とされやすい。脱水が誘因になりやすく、動脈硬化で血流が一時的に低下して脳梗塞の症状が表れる。ところが多くは数十分から数時間以内(定義は24時間以内)に症状が治ってしまいます。この場合も放置すると、本格的な脳梗塞を発症するリスクが高いので危険です」

“症状が軽いから”といってタクシーで病院へ行くのは、やってはいけない。必ず救急車を呼ぶようにしよう。夏場は脳梗塞予防のためにも「飲酒後」「入浴後」「寝る前」「起床後」の水分補給はしっかりやろう。