がんと向き合い生きていく

セカンドオピニオンは患者の権利 遠慮はまったく必要ない

東京都立駒込病院名誉院長・佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「もう治療法はなく、あと3カ月の命と告げられました。セカンドオピニオンの紹介状は書いてもらいました。でも、もうあんなに冷たい病院には戻りたくありません。A先生の顔も見たくありません。この病院で治療して下さい。死んでも構いません」

 15年ほど前から、私の診察室に来られるセカンドオピニオンの患者さんは、ほとんどががん専門病院からの転院を希望される“がん難民”といわれる方でした。いまでこそ少なくなりましたが、毎週、このような患者さんが訪れていました。

 多くの患者さんは、保険診療ができる薬剤がまだ残っていても、治療を受けていた病院の医師から「ガイドラインに載っていない。電子カルテで決められた治療以外はできない」「もう治療法がなくなったので好きな病院に行っていい」と告げられたと言います。

 セカンドオピニオンは他病院の意見を聞きにいくのであって、転院したり、担当医をかえることを目的にしたものではありません。しかし、ここで断られたらもう行き先がありません。患者さんは必死です。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。